わたしの忘れられないお客さま 第6回:もし、私の父だったら。

もし、私の父だったら。

今から十数年前の出来事です。
相談窓口でお客さまからのお電話に応対していた私は、お年を召された男性のお客さまに、発芽米の炊き方を尋ねられました。

私が水加減やつけおき時間などをご案内していたところ、まず、お米のはかり方や炊飯器の操作方法から教えてほしいとのこと。

お答えしていると、ご自身の状況を少しずつ教えてくださいました。実は、数カ月前に奥様を亡くされたこと。食事の用意は、奥様に任せきりだったこと。何をどうしたら良いか困っていること。

もし、この方が自分の父親だったらと思うと、すぐにでも駆けつけてお米を炊いてあげたいところですが、そういうわけにもいきません。

できる限りご質問にお答えし、「大変でしょうが、どうぞお体に気をつけてお過ごしください。またご不明な点があればいつでもご相談ください。」とお伝えすることしかできませんでした。

会話をしているうちに、お客さまのお声が、明るくなられたことに少しだけ安心したのを覚えていますが、あれからどのように過ごされているかな…と、いまでも時折思い出します。

お料理の楽しさに目覚めていますように。そして発芽米が、お客さまの健康と未来に役立っていますように。そう、心から願っております。

この記事をシェアする

  • LINE